なぜ「保養」なのか

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放射能のことを気にするなら、どこか安全なところに移住すればいいではないか。
人は簡単に考える。
でもどうしてもそこから動けない人たちだっている。
仕事のこと、老いた親のこと、子どもの学校のこと
他人には分からぬ悩みや呵責を抱え、その地に暮らし続けることを選択した人たち。
しかし、どんなに食材にこだわろうと、屋外の遊びを控えさせようと
否応なく身体は放射線にさらされ、体内には放射線物質が蓄積されていく。
放射線による影響は、甲状腺がんなど大きな疾病として現れるだけではない。
それは免疫機能を低下させ、風邪や頭痛、関節痛など幅広い症状をもたらす。
だからこそ、放射線量の低い地域に一定期間疎開させる「保養」が大きな意味をもつ。
保養によってもたらされるクリーンな食材やストレスのない生活環境が
体内の放射線物質を排出し、身体に本来の免疫機能を取り戻させるからだ。

チェルノブイリ原発事故の被爆国となったベラルーシでは国が制度として保養を実施している。
そこでは、3歳から18歳までの子どもが無料で最低24日間の保養を受けることができ、
事故から30年経った現在でも年間10万人の子どもたちが利用している。
福島に限らず、線量が高い地域に住む人たちの保養を求める声は大きい。
しかし、日本で保養は国策となっておらず、いまだに草の根レベルで支え続けている。

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